東北エネルギー懇談会

お知らせ

「ひろば」518号 発行

2023.05.26|広報誌

特集

電気料金高騰の背景と今後の見通し
常葉大学 名誉教授
NPO法人国際環境経済研究所副理事長兼所長 山本 隆三氏

(本文要約)

世界一の化石燃料輸出国・ロシアによるウクライナ侵攻は、エネルギー価格の上昇を通し世界中で物価上昇を引き起こし、各国にエネルギーの重要性をあらためて認識させた。加えて主要国のエネルギー安全保障に関する考えを根底から覆し、新たなエネルギー政策の構築を迫ることになった。

 

・欧州においてエネルギー価格の上昇が顕著になった理由は、ロシア産の化石燃料(石油、石炭、天然ガス)に依存していたためだ。第一次石油危機の経験から世界はエネルギー源の多様化を進めたが、その結果、中東諸国に代わりロシアへの依存度を高めてしまった。また、ドイツによる海底パイプライン建設と欧州主要国の脱炭素の取り組み、加えてコロナ禍がロシアの立場をさらに強固にした。

 

・今回の戦争で、ロシア産の化石燃料への依存はリスクが高いと学んだ主要国は、エネルギー政策を供給源の多様化から自給率向上へと変化させた。EUでは再エネの拡充、原子力の活用による脱ロシアとエネルギー自給率向上、脱炭素を目指すが、短期的にはロシア以外の産出国から化石燃料を購入するため、一部の化石燃料の調達で競合する可能性が高い日本への影響も続くと予想される。

 

・主要国の中でエネルギー自給率が最も低い日本にとっては、自給率の向上は大きな課題だが、同時にエネルギー価格引き下げと脱炭素という課題にも対処する必要がある。脱炭素のために再エネは重要だが、同時に自給率、安定供給と電気料金の観点からは既存原発の再稼働を急ぐことが必須だろう。

 

・経済成長のためには競争力のある電気料金は重要だ。日本経済復活や働く人たちの給与引き上げのカギの一つは、競争力のあるエネルギー価格にある。今は国民も産業も競争力のある電気料金を享受できるかどうかの正念場にある。
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せとふみのereport

エネルギーミックスを支える現場から -技術者たちの思い-
サイエンスライター 瀬戸 文美氏

(本文要約)

・東新潟火力発電所は、国内でも有数の規模を誇る火力発電所だ。運転開始から大容量ベースロード電源として活用されてきたが、現在は需給状況にあわせて柔軟に対応する、調整電源としての運用にシフトしてきている。また、1984年に運転を開始した3号系列は、国内初の事業用大容量コンバインドサイクル発電を採用したことで「コンバインドサイクル発電発祥の地」と言われている。

 

・コンバインドサイクル発電とは、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた二重の発電方式である。圧縮した空気とLNGを混合・燃焼させて高温高圧の燃焼ガスをつくり、その圧力でガスタービンを回して発電を行う。さらにその排熱を利用し、蒸気タービンによる発電も行うため熱効率が高い。同量の燃料で従来の火力発電より多くの電力を生産でき、CO₂排出量も抑えることができる優れた発電方法だ。

 

・HTTRは燃料や炉本体、一部の機器・配管も高熱に耐えられる必要がある。燃料には炭素や炭化ケイ素からなるセラミックス材料が活用されている。熱に強い燃料や黒鉛製の炉内構造材を用いることで、燃料が溶け出して炉を壊すような深刻な事故の恐れはなく、また、冷却材に水を使わないため、水素爆発や水蒸気爆発を起こすこともない。

 

・今回は、東新潟火力発電所・運営企画グループ長の山田綾野さんに話を伺った。山田さんは管理職として、相手との信頼関係を築くことを心がけながら、年代や経験、スキルなどが異なる多様な人材をベストミックスさせて成果を最大限に発揮し、発電所全体の環境を守ると共に、組織も自分も成長し続けていくことを目指している。

 

・どんなに技術が進歩しても、その技術を使うのは「人」。共に働く仲間とコミュニケーションをしっかり取って、強い使命感と高い技術力をもった電力の安定供給を支える人材を育てたい。また、地域の小学校を対象に環境・エネルギー教室を行うことで、次代を担う子どもたちに環境やエネルギーなどの大切さも伝えていきたいと、会社の枠を越えた未来に向けた人材育成への想いを話してくれた。
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教えて!坪倉先生 気になる“ ほうしゃせん”

トリチウムって、なに? ―その1―
福島県立医科大学 医学部放射線健康管理学講座 主任教授 坪倉 正治氏

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