東北エネルギー懇談会

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「ひろば」531号 発行

2025.07.25|広報誌

特集

カーボンニュートラルに向けた需要側の役割 家庭部門での省エネの重要性
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 土井 菜保子

(本文要約)

・2025年2月、新たなエネルギー基本計画と地球温暖化対策計画が閣議決定され、日本政府は同日、「温室効果ガス(GHG)の排出量削減目標」を国連に提出した。日本の温暖化対策として発電部門における再エネ導入などの議論が広く行われているが、それと等しく産業・家庭・業務・運輸といった需要部門におけるGHG排出削減に向けた対策も重要である。具体的には省エネの推進とエネルギーの非化石転換が必要である。省エネは技術によるエネルギー使用量の節減と無駄なエネルギーの使用を控えるなどの行動の変化という2つの側面から成り立つ。エネルギーの非化石転換としては自動車燃料へのバイオマス由来エタノールの混合、家庭での屋根置き太陽光の設置、ボイラーにおけるバイオマス燃料の活用などがある。

 

・地球温暖化対策計画において、産業部門、家庭部門、運輸部門等のなかで2030年度において最もGHG排出削減率が大きい家庭部門(2030年度で2013年度比66%削減)に着目したい。日本の家庭部門のエネルギー消費は、欧米に比べ照明・家電の割合が大きい。家庭部門の機器の耐用年数は10~15年、住宅の構造などは30~50年以上と長く、省エネ家電など技術の大幅な入れ替えには時間を要する。筆者分析では将来的に家庭部門において2050年に33%のエネルギーの節減となるが、カーボンニュートラル(CO₂排出ゼロ)の実現には、現在ガスで賄っている暖房や給湯用の需要の電化、ガスのメタネーション化など、省エネ・電化・非化石転換のあらゆる手段を総動員することが必要である。

 

・家庭部門の省エネ対策促進に向け、日本では、住宅の省エネ改修にかかわる潤沢な助成があり、窓や外壁などに加え、エアコンや給湯器の高効率化に向けても補助金も準備されている。

 

・諸外国においても家庭部門の省エネは重要な政策課題である。欧州では「EPC」と呼ばれる住宅の省エネ性能評価が活用されている。最も効率的なAランクから最も非効率的なGランクまで7段階で評価するもので、これをラベル化して消費者に対して情報提供を行っている。EPCの取得は新築時、大規模改修時、売却時、賃貸時にオーナーが建築士を通して行う必要があり、省エネ性能が低い等級の物件は賃貸を禁止するなど規制の指標としても活用されている。

 

・カーボンニュートラルの実現に向けて、住宅・建築物におけるCO₂の削減は、使用段階だけでなく、建設から解体に至るまでのライフサイクル全体におけるCO₂排出の削減が必要であり、欧州と日本では先進的な取り組みが進められている。

 

省エネは一つひとつの効果は小さいものの、全体として大きな効果を発揮しうる。カーボンニュートラルの実現に向けた家庭部門での取り組みが期待されているが、その実現には技術的な効率改善、省エネ行動変容など、取り得るべき手段を総動員する必要がある。消費者には省エネラベル情報の適切な活用や省エネに向けた助成措置や税優遇などに関する情報を活用した適切な選択が求められる。
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放射線のおはなし

中性子線による非破壊検査
東北放射線科学センター 理事 石井 慶造氏

せとふみのereport プラス

エネルギーミックスを支える現場から―技術者たちの思い―~鳥海南バイオマス発電所~

・2024年11月、山形県飽海郡遊佐町に鳥海南バイオマスパワー株式会社(東北電力グループ)の鳥海南バイオマス発電所が誕生した。東北電力グループとして初めての木質バイオマス専焼発電所だ。最大出力52,900kW(県内最大級の規模)を誇り、年間で約3.3億kWhの電力(一般家庭約11万世帯分の使用電力量に相当)を発電する。

 

・燃料は、木くずなどを細かく砕き、圧縮成形した「木質ペレット」を100%使用する。二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量は相殺(ペレットの原材料となる樹木は成長する過程で二酸化炭素を吸収し、その樹木から作られた木質ペレットは発電過程で二酸化炭素を排出) され、実質的にゼロとなるエネルギー源。

 

・二酸化炭素の排出量は年間約14万t削減される見込みで、政府が掲げる2030年度、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すカーボンニュートラル社会の実現に欠かせない発電方式だ。太陽光や風力などと違って発電出力が安定しているので、二酸化炭素排出量の削減とエネルギーの安定供給、双方に寄与できるのが当発電所の大きな特徴となっている。

 

・木質ペレットは東南アジアなどの海外から運搬船で運ばれ、酒田港から陸揚げされトラックで運搬される。発電所運営においては、燃料の調達・運搬・保管と品質管理などの業務が重要となる。この一連の燃料管理業務を担うが、今回お話を伺ったマネージャーの草壁博司さん。東北電力本店でのLNGなど燃料調達業務の経験を見込まれ当発電所に出向となった。

 

・燃料が実際の発電に使用されているのを現場で目の当たりにすると、うれしさと同時に発電や安定供給に対する責任感をひしひしと覚える。少人数職場なので、自分で考え自分の裁量で進めることができるが、そこからさらに学んで成長し、これからも地域社会やエネルギーの安定供給に貢献していきたい、と語った。
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教えて!坪倉先生 気になる“ ほうしゃせん”

放射線による治療と検査 ―その2―
福島県立医科大学 医学部放射線健康管理学講座 主任教授 坪倉 正治氏

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東北エネルギー懇談会 2025年度 定時総会・記念講演会

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