東北エネルギー懇談会

お知らせ

「ひろば」515号 発行

2022.11.30|広報誌

特集1

処理水放出問題でいまメディアに何が求められているか!~事態を解決しようとする当事者意識の有無がカギを握る〜
メディアチェック集団「食品安全情報ネットワーク」共同代表/食・科学ジャーナリスト 小島 正美氏

(本文要約)

・東京電力福島第一原子力発電所の処理水の放出が成功するか否かは、原発事故に伴う放射線の影響を国民がどの程度正しく受け止めているかにかかっている。福島への風評被害を防ぐためにも、メディアは放射線の影響を的確に報道すべきだが、「安全なら報じる価値がない」と、安全情報を軽視する傾向がある。

 

・放射線影響がないとわかれば、福島県や福島産食品へのイメージはよくなる。福島の地方紙は「当事者意識」をもって「健康へ放射線の影響なし」と正しく報じた。メディアは安全なニュースを報じない習性があるが、今後はその姿勢を転換する必要があるだろう。

 

・他国からの批判に対し、メディアは「その批判はあたらない」と科学的事実を突きつけるほどの当事者意識をもたなければ風評は収まらない。風評はメディアが介在して初めて国民全体に伝わるものであり、自らの記事が風評をつくり出してしまうという自覚をもつことが、いまのメディアに最も必要なことだ。

 

・処理水の放出をスムーズにするためには、メディアが何を問題にしているかをしっかりと把握し、その解決に乗り出すことも必要だ。文言の解釈は読み手によってさまざまなので、政府や東京電力は、わかりやすい説明をメディアに提示する必要があるだろう。
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特集2

電力の需給逼迫招いた自由化 供給力強化へ電源投資促す制度を
産経新聞東京本社 論説委員室 論説副委員⾧ 井伊 重之氏

(本文要約)

・岸田首相は今年8月のGX実行会議で、日本として原発の新増設や建て替えに取り組む姿勢を明確に示した。政府は年内に、次世代原発の開発・建設や既存原発の再稼働促進、運転期間の延長などについて、具体的な方向性を提示する予定だ。それが、日本のエネルギー安全保障を確立することにもつながるだろう。

 

・しかし、原発の再稼働は23年夏以降の見通しだ。何より、電力自由化や脱炭素化に伴い、老朽化した火力発電所の休廃止が当初の予想以上の速さで進んでおり、火力発電の退出抑制や新規電源投資を促す制度を同時に整備しなければ、慢性的な需給逼迫を脱することはできない。それだけに電力自由化の見直しは急務だ。

 

・2016年4月の電力小売の全面自由化に合わせ、政府は火力発電の休廃止を事前届け出から事後届け出に改めていたが、最近の相次ぐ電力需給逼迫の状況から、火力発電の休廃止には再び事前の届け出が求められるようになった。この変更は、電力自由化の制度設計が実態に合わなくなったためであり、自由化のあり方をあらためて点検する必要がある。

 

・小売全面自由化後、発電事業者は稼働電源を必要最小限に絞り、休止電源を増やす傾向にある。卸電力価格の低下が続いたため、市場原理により、発電コストが高く老朽化した火力発電は休廃止に追い込まれている。こうした火力発電の退出が、現下の供給力不足となって顕在化している。現在休止中の発電設備の管理も問われる。予備的な電源として維持するための休止には、公的な支援を講じるなどの工夫も求められる。

 

・供給力の増強には、新規の電源投資への回収予見性を高める必要もある。経産省では投資回収の予見可能性を確保しながら、「長期脱炭素電源オークション」を導入する計画だ。入札の対象は、発電時にCO₂を排出しない電源への新規投資。入札時にはアンモニアや水素の混焼火力発電など技術開発途上のものに対して最低容量を引き下げるなど、実効的な対策も必要だろう。
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せとふみのereport

「脱炭素へ期待の取り組み」次世代ガスタービン~東北電力 上越火力発電所~
サイエンスライター 瀬戸 文美氏

(本文要約)

・2022年12月の営業運転開始に向けて準備を進めている東北電力上越火力発電所は、最新鋭のガスコンバインドサイクル発電で、高効率の燃焼と得られた燃焼エネルギーの無駄のない活用に取り組んでいる。最先端技術の次世代ガスタービンを導入した火力発電所の電力の安定供給に向けた取り組みを紹介する。

 

・コンバインドサイクル発電とは、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式のこと。熱エネルギーを無駄なく使用できるため、従来のガス火力発電の熱効率が40%台前半であるのに対し、上越火力は63%以上にすることを目指している。

 

・上越火力は、燃料を燃やして燃焼ガスを発生させる「燃焼器」を冷却する方法として「強制空冷」を採用している。これにより燃焼器を冷却する際に回収した熱を、ガスタービンに利用できるなど、燃焼で得られた熱エネルギーを無駄なく活用することで、高い熱効率を実現できる。

 

・地震や津波などの自然災害への対策も行っている。地震対策としては、基礎工事で地盤まで60mを超える杭を約500本使用し、煙突などには制震装置を設置。津波対策としては、電気系統設備などを建屋内の高い位置に設置している。

 

・再生エネの活用も進んでいるが、天候や季節によって変動がある太陽光や風力の発電量に応じて可不足分の調整役を担う火力発電がないと困るのが実態だ。そのため、低炭素化と安定供給を両立できるベース電源として、上越火力のような火力発電所が必要である。
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放射線のおはなし

炭素14 の測定、それはロマンをかき立てる
東北放射線科学センター 理事 石井 慶造氏

エネルギーを学ぶ・伝える・考える

七ヶ宿町立七ヶ宿中学校(宮城県刈田郡七ヶ宿町) 村松 徹也氏・五嶋理氏

 

以上

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