エネルギーミックスを支える現場から―技術者たちの思い―
~鳥海南バイオマス発電所~
サイエンスライター 瀬戸 文美氏
・2024年11月、山形県飽海郡遊佐町に鳥海南バイオマスパワー株式会社(東北電力グループ)の鳥海南バイオマス発電所が誕生した。東北電力グループとして初めての木質バイオマス専焼発電所だ。最大出力52,900kW(県内最大級の規模)を誇り、年間で約3.3億kWhの電力(一般家庭約11万世帯分の使用電力量に相当)を発電する。
・燃料は、木くずなどを細かく砕き、圧縮成形した「木質ペレット」を100%使用する。二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量は相殺(ペレットの原材料となる樹木は成長する過程で二酸化炭素を吸収し、その樹木から作られた木質ペレットは発電過程で二酸化炭素を排出) され、実質的にゼロとなるエネルギー源。
・二酸化炭素の排出量は年間約14万t削減される見込みで、政府が掲げる2030年度、温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すカーボンニュートラル社会の実現に欠かせない発電方式だ。太陽光や風力などと違って発電出力が安定しているので、二酸化炭素排出量の削減とエネルギーの安定供給、双方に寄与できるのが当発電所の大きな特徴となっている。
・木質ペレットは東南アジアなどの海外から運搬船で運ばれ、酒田港から陸揚げされトラックで運搬される。発電所運営においては、燃料の調達・運搬・保管と品質管理などの業務が重要となる。この一連の燃料管理業務を担うが、今回お話を伺ったマネージャーの草壁博司さん。東北電力本店でのLNGなど燃料調達業務の経験を見込まれ当発電所に出向となった。
・燃料が実際の発電に使用されているのを現場で目の当たりにすると、うれしさと同時に発電や安定供給に対する責任感をひしひしと覚える。少人数職場なので、自分で考え自分の裁量で進めることができるが、そこからさらに学んで成長し、これからも地域社会やエネルギーの安定供給に貢献していきたい、と語った。

