エネルギーミックスを支える現場から―技術者たちの思い―
~リサイクル燃料貯蔵株式会社~
サイエンスライター 瀬戸 文美氏
・青森県むつ市に立地するリサイクル燃料貯蔵株式会社(略称RFS)は、原子力発電所から発生する使用済燃料を再処理するまでの間、安全に貯蔵・管理することを目的に、日本で唯一の使用済燃料中間貯蔵事業者として2005年11月に設立され、2024年11月に事業が開始された。
・エネルギー資源に乏しい日本では、原子力発電は安全性の確保を大前提に、エネルギーミックスの中で重要なベースロード電源とされている。資源の有効利用などの観点から、日本では原子燃料サイクルの推進を基本方針としており、使用済燃料中間貯蔵は、この原子燃料サイクルの一翼を担う重要な事業と位置づけられている。
・原子力発電所で発生した使用済燃料集合体は、「キャスク」と呼ばれる全長約5.4m、直径約2.5mの円筒形の金属容器に格納される。再処理されるまでの間、このキャスクを安全に保管しておくのがRFSの役割である。約3,000tを保管できるリサイクル燃料備蓄センター1棟目に2024年9月、最初のキャスクが搬入され、貯蔵が始まった。将来的には、2,000tを保管できる2棟目も建設し、合計5,000t規模の貯蔵能力を有する予定。
・RFSは会社設立段階から、経験豊富なほかの電力会社や関連企業からの出向社員で構成されていたが、将来の貯蔵業務を見据え、2016年から新卒社員を直接採用し、育成している。その1人が、貯蔵保全部保全グループと貯蔵グループを兼務する技術者の山本海さんだ。重要な役割のある事業を進めている中間貯蔵施設のメンバーとして安全管理という責務の一端を担うべく、設備の保全管理については自分がいちばん詳しい人になる、という自覚を持って業務にあたっている、と話す。
・一方、入社2年目の北上詩織さんは、それまで出向社員のみで構成されていた技術安全部技術グループに初めて新卒社員として配属された。各種会議の資料をとりまとめ、実際の会議進行や議事録の作成を行ったり、社外の技術情報を集めるなど、各グループをつなぐ要の役割を担っている。ほとんど英語で専門用語も多い原子力規制委員会・IAEAによる査察・保障措置関連の業務も一人でできるようになりたい、ほかのグループの仕事にも広い視野で目を向けていきたい、と話す。
・今回の取材により、山本さんや北上さんなど地元出身の社員が成長し、バトンがしっかり引き継がれ、脱炭素社会や日本のエネルギー自給の一翼を担う「原子燃料サイクル」を支えるRFSの未来を感じることができた。

