「ひろば」530号 発行
2025.05.23|広報誌
特集
脱炭素電源の拡大に向けたエネルギー戦略の条件
日本経済新聞社コメンテーター 松尾 博文氏
(本文要約)
・ロシアによるウクライナ侵略、イスラエルとパレスチナの衝突、さらにトランプ政権の国際協調に背を向けた姿勢など、エネルギーを取り巻く環境が国内外で大きく変化する中、新たな第7次エネルギー基本計画が策定された。
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・電力を大量に必要とする人工知能の普及と、その活用に欠かせない高性能半導体工場やデータセンターの新増設により、電力需要の増加が世界規模の課題となりつつある。エネルギー安全保障の再評価と増大する電力需要の下、米国の巨大テック企業やEUにおいて、脱炭素電源である原子力発電に対する再評価が進む。
・基本計画の目標実現には高いハードルが控える。2040年度の電源構成について、再エネを4~5割程度と定め最大の電源に位置づける。原子力を2割程度とし、再エネと原子力の脱炭素電源合計で最大7割を確保する。しかし、再エネ拡大の切り札として期待されている風力発電事業は、資材や人件費など事業コストの急上昇により国内外で逆風にさらされている。原子力の導入も簡単ではない。計画の実現には2022年度実績の約4倍の発電量が必要になる計算であり、建設中の3基を含む、国内36基の原発のほぼすべてが動かなければならない。
・脱炭素電源を伸ばすには、地域経済の発展につなげられるかが重要。データセンターなど電力多消費施設の立地は、脱炭素電源が豊かな北海道などが有力な候補地だ。北海道から東京へ電力ケーブルで電力を送るよりも、北海道の施設と東京を通信回線で結んでデータをやりとりする方が投資を抑えられる。原発4基が早々に再稼働し脱炭素電源が6割を占める九州では、東京より電気料金が2割安い。台湾積体電路製造が熊本県への工場進出を決めた理由が、安価で安定的な電力の存在だったことは無視できない。
・国際エネルギー機関によれば、中国は2030年に太陽光パネル市場の約8割、風力発電機は6割超、電気自動車用の蓄電池は約7割のシェアを握ると試算する。またそれらの製造に欠かせない鉱物資源でも中国の存在感が大きい。日本が再エネを最大限活用し、脱炭素技術に支えられたエネルギー転換を進めるには、製品や原材料を安定確保するための新たな時代の資源安全保障の重要性が増す。
放射線のおはなし
がん治療と核医学診療
東北放射線科学センター 理事長 宍戸 文男氏
せとふみのereport プラス
エネルギーミックスを支える現場から―技術者たちの思い―~電源開発株式会社 郡山布引高原風力発電所~
・郡山布引高原風力発電所は、国内でもいち早く風力発電に取り組んだJ-POWERグループが運営する23地点の風力発電所の中でも、国内最大級となるウインドファーム。猪苗代湖の南に位置する会津布引山(標高1,081m)の高原に33基の風車が設置され、力強く再生可能エネルギーを生み出している。
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・33基合計の出力は65,980kWで、一般家庭約35,000世帯分の電力消費量に相当する年間12,500kWhを発電し、年間約51,000tもの二酸化炭素を削減する。
・風車の周辺は農地も多く、ここでは発電と農業との共生が図られている。広大な農地では地域の名産である布引大根などが栽培され、休耕地では季節の花が育てられる。夏にはひまわり、秋にはコスモスと風車が一望できる観光スポットとして親しまれ、人の営みと自然とエネルギーの調和を見出すことができる。
・今回お話を伺ったのは風車の保守管理を担っている株式会社ジェイウインドサービス 郡山布引事業所の結城大佑さん。風車そのものの操作や点検・確認などはもちろんのこと、風車設置場所周辺やアクセス道の倒木伐採や草刈り作業、冬季の除雪、また作業の妨げになるカラスの巣の撤去など、その業務は多岐にわたる。
・オートフライト機能を搭載したドローンによる風車ブレードや送電線の精度の高い安全点検作業には力を入れている。ドローン導入により、作業者は危険な場所に近づくことなく安全に点検できる。私たち発電や電気に関わる仕事をしている者にとっていちばん大事なのは安全。安全から電気の安定供給が生まれる。安全をともにつくり上げていく「人の力」「人のつながり」が大切と思っている、と語った。
教えて!坪倉先生 気になる“ ほうしゃせん”
放射線による治療と検査 ―その1―
福島県立医科大学 医学部放射線健康管理学講座 主任教授 坪倉 正治氏
報告
第27回 青森県の高校生による海外エネルギー事情研修会
「私たちで日本を明るくレボリューション☆」
トピックス
以上