東北エネルギー懇談会

お知らせ

「ひろば」516号 発行

2023.01.31|広報誌

特集

国際エネルギー情勢と日本のエネルギー政策
日本エネルギー経済研究所 常務理事 山下 ゆかり氏

(本文要約)

・脱炭素に向けて世界各地で再生可能エネルギーの導入が増えたため、2021年初めから電力需給ひっ迫が世界でたびたび生じていた。そこで、バックアップ電源として、機動的に再エネ電力の変動を補い、天候不順などによる需要急増への対応が可能で、CO₂排出量が相対的に少ないガス火力の運用が増えてガス価格が高騰していた。

 

・ロシアによるウクライナ侵攻は天然ガス市場の混乱にさらに拍車をかけた。特にロシアへのエネルギー依存が大きい欧州各国では、電力とガスの供給不安の解消が喫緊の課題となった。日本もロシアから化石燃料を輸入しているが、その輸入量は限定的だ。国内のエネルギー資源が限られ、他国と送電線などでつながっていない日本では、海外からの輸入を前提にエネルギー源と供給源(国)の多様化重視の視点からロシアからも輸入している側面がある。

 

・しかし日本でも、2022年には2回の電力需給ひっ迫が生じた。脱炭素に向けて再エネ電力の増大と原子力発電の再稼働が進められる中、2016年の電力小売自由化以降、経済性を失った老朽火力発電の休廃止が進み、急な需要増大などへの調整力が失われつつある。そのため長期脱炭素電源オークションをはじめとした各種対応策、システム整備などの検討が進められている。

 

・世界的なガス不足によって、欧州では一時的な石炭利用や原子力を再評価する動きも出てくるなど、電源のベストミックスを考えることの重要性があらためて認識されている。日本では2022年8月のGX実行会議において、岸田総理大臣から「原子力を再エネと並ぶ将来にわたる選択肢として強化するためのあらゆる方策について年内に具体的な結論を出すよう」指示が出され原子力政策推進への転換が始まった。

 

・コロナ禍・ウクライナ問題などを境に、世界は大きく変化した。気候変動への対応の必要性に変わりがない中、エネルギー資源や技術など、各国の格差も明らかになりつつある。日本企業が生き残るためにはどのような産業構造、社会経済構造を目指すべきなのか、どの技術を開発・維持すべきなのかなど、企業の生き残りをかけた技術覇権競争がすでに始まっている。
<全文PDFはこちら>

せとふみのereport

「再エネ拡大に向けた取り組み」洋上風力発電~秋田洋上風力発電株式会社(展示施設:AOW 風みらい館)~
サイエンスライター 瀬戸 文美氏

(本文要約)

・日本屈指の風力発電適地と言われる秋田県では、日本海沿岸を中心に69カ所もの風力発電所がある。今回は、2022年12月に営業運転を開始した日本初の大規模洋上風力発電事業と洋上風力発電の今後について教えてもらうため、秋田洋上風力発電株式会社を訪ねた。

 

・風車の羽根に受けた風の力を回転力に変え、発電機を回して発電する風力発電。化石燃料を使用せずに発電できるため、脱炭素社会の実現に向けて期待される電力源のひとつだ。しかし風が吹かないと発電できない、風の強弱に発電量が左右されるといった再エネならではの欠点もあるため、年間を通して風況が安定した場所に風車を設置し、大きな羽根で風を受けることが重要になる。

 

・日本ではこれまで、継続的に風が発生する山岳地に多くの風車を設置してきたが、工事がしやすく、かつ安定した風が得られる山岳地には限りがある。そこで今、「海」の活用が注目されている。洋上は陸上に比べて強い風が継続的に吹くため発電効率がよく、稼働率もアップする。一方で、高い技術力を要する、建設コストがかかるといった欠点もあり、コスト低減につながる工夫が必要だ。

 

・水深50mほどの浅いエリアにある秋田・能代港の風車は、基礎が海底に固定される「着床式」工法で建設されている。しかし今後、港湾外の一般海域に洋上風力発電を拡張していくためには、風車を海底に固定せず、海面に浮かべた土台の上に建設し、水深が深い場所でも活用できる「浮体式」工法の洋上風力発電を、日本で研究開発することが必要不可欠だ。

 

・洋上風力発電が日本の基幹電源の切り札となるためには、官民一体となってコスト低減のために風車や各種設備の国産化と大型化のための技術を培い、政府主導により一般海域で大々的に洋上風力発電を展開・拡張していく必要がある。日本から世界へと、風力発電技術の研究開発が展開していくことが期待される。
<全文PDFはこちら>

放射線のおはなし

宇宙旅行では、どの位被ばくするのか
東北放射線科学センター 理事長 宍戸 文男氏

エネルギーを学ぶ・伝える・考える

⼭形県⽴⼭形⼯業⾼等学校(⼭形県⼭形市) 阿部 新吾氏・櫻井 晋弥氏・𠮷田 幸宏氏

 

以上

ページトップへ