東北エネルギー懇談会

ひろば517号|せとふみのe report <要約版>

「脱炭素を目指す取り組み」高温ガス炉〜国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 大洗研究所高温ガス炉研究開発センター〜
サイエンスライター 瀬戸 文美氏

・敷地面積160万㎡という、広大かつ国内外でも屈指の新型原子炉の研究開発拠点である、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA)の大洗研究所。研究所内には3つの原子炉があり、今回は日本で唯一の高温ガス炉の試験研究炉HTTR(高温工学試験研究炉)についてわかりやすくレポートする。

 

・高温ガス炉とはヘリウムガスで950℃の熱を取り出せる原子炉。現在、発電用途に使われている原子炉は「軽水炉」と呼ばれ、そのほとんどが核分裂によって発生した熱を取り出すための「冷却材」に水を利用している。その水の代わりに、高温でも安定なガスであるヘリウムを冷却材として利用しているのが、次世代原子炉であるHTTRだ。

 

・HTTRは燃料や炉本体、一部の機器・配管も高熱に耐えられる必要がある。燃料には炭素や炭化ケイ素からなるセラミックス材料が活用されている。熱に強い燃料や黒鉛製の炉内構造材を用いることで、燃料が溶け出して炉を壊すような深刻な事故の恐れはなく、また、冷却材に水を使わないため、水素爆発や水蒸気爆発を起こすこともない。

 

・安全性が高く、高温熱を得ることができるHTTRの用途は、発電だけではなくカーボンフリーの水素製造についても期待されている。水を直接、水素に分解するためにはとてつもない高温が必要だが、ヨウ素(I)と硫黄(S)を媒介にするIS法では、800〜900℃ほどの温度で水を分解して水素を生成することができるため、JAEAでその研究が進められている。

・水素と電気、どちらの需要にも応えられるのは高温ガス炉ならではの利点。水素製造に加え、ヘリウムガスでタービンを回し、発電を行うことができれば、天候や季節によって出力が変動する再生可能エネルギーを補完することもできる。今後、ヘリウムガスタービンの研究開発も計画されており期待が高まる。

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