東北エネルギー懇談会

ひろば514号|せとふみのe report <要約版>

「脱炭素へ期待の取り組み」アンモニア発電②~株式会社JERA 碧南火力発電所~
サイエンスライター 瀬戸 文美氏

・ JERA碧南火力発電所は総出力410万kWの、石炭火力としては国内最大、世界でも最大級の火力発電所だ。低炭素に関するさまざまな取り組みを行っているが、今回は火力発電所の燃料として、燃やしてもCO₂を排出しないアンモニアを混焼する技術を確立するための実証試験の様子を取材した。

 

・ CO₂の排出量削減に向けて、多くのCO₂を排出する石炭火力の比率を低減していく必要があるが、現状では、安価で安定した電力供給のためのベース電源として石炭火力発電は必要不可欠であり、高効率化等CO₂排出量の削減が求められる。碧南火力発電所では、既存の設備を利用し、燃料にアンモニアを混ぜ、CO₂排出量を低減させる実証試験を行っている。

 

・ アンモニアを燃料に混ぜるために改造されるのは、「バーナ」と呼ばれる燃料をボイラ 内に投入し燃焼させるための装置だ。碧南火力発電所では5号機による小規模な試験を経て、今後は4号機のバーナをすべてアンモニア混焼用に改造し、アンモニア20%混焼の大規模実証試験を行い、その後の商用運転へと展開していく予定だ。

 

・ アンモニアを混ぜる割合を20%以上に増やそうと考えたとき、問題となるのがその燃えにくさだ。碧南火力発電所では50%以上のアンモニア混焼が可能なバーナを開発するとともに、燃焼温度などについての検証や、ボイラなど他の設備がこのまま利用可能かどうかを検討し、可能な場合は2028年までに50%以上のアンモニア混焼の実証実験を行う予定だ。

・ CO₂排出量が多いからといって、石炭火力発電所を今すぐに全部止めるわけにはいかない。電力の供給コストを抑制するとともに安定供給を続けながら着実にCO₂排出量を削減するためには、研究開発成果を実機実証試験で確認するというイノベーションの積み重ねが必要だ。

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