東北エネルギー懇談会

ひろば525号|特集 <要約版>

カーボンニュートラルに向けた わが国のエネルギー戦略について
(公財)地球環境産業技術研究機構(RITE)
システム研究グループリーダー・主席研究員 秋元 圭吾 氏

・カーボンニュートラル実現に向けた対策、とりわけ産業のカーボンニュートラル実現に向けてはエネルギーの脱炭素化が不可欠である。一次エネルギーは、再エネ、原子力、CO回収貯留(CCS)付きの化石燃料のみで構成することが必要であり、最終エネルギーとしては、電化を促進することが重要な対策となる。

 

・太陽光、風力など変動性再エネは、費用抑制の点からも、またエネルギー安定供給・安全保障の点からも課題が多い。しかし、現状では万能な技術は存在しないため、さまざまな技術を組み合わせ、できる限り安価にカーボンニュートラルを実現していくことが重要である。特に水素や水素系エネルギーは、電力同様、二次エネルギーとしてさまざまな一次エネルギーから製造でき、また多くの利用先があり、実質CO排出ゼロを実現し得る。

 

・日本は水素系エネルギー製造に必要な、再エネ(グリーン水素)やCO貯留(ブルー水素)のポテンシャルが海外に比べ大きくなく、またコストも高いため、大量の利用には海外からの輸入が経済合理的と考えられている。したがって、現状では、水素、アンモニア、e-メタンやe-fuelなどの水素系エネルギーの多くを輸入して利用することが費用対効果が高いと評価されやすい。

 

・2024年5月に成立した「水素社会推進法」では、国が前面に立って低炭素水素などの供給・利用を早期に促進するため、計画認定を受けた事業者に対する支援措置や規制の特例措置を講じるとした。事業者は化石燃料と水素などのエネルギーとの価格差の補填や、水素などの拠点整備などについて、政府からの助成金を受けることができるようになる。

 

・世界はカーボンニュートラル実現と自国の競争力強化に向けて、技術開発や普及に向けて熾烈な競争をしている。政府の補助金をてこにして、水素系エネルギーの開発そして産業への展開を図り、よりよい技術を、より早く、より安価に提供し、カーボンニュートラルに向けての国際的な競争に勝っていかなければならない。

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