東北エネルギー懇談会

ひろば523号|特集 <要約版>

東日本大震災から13年 津波被害と防災について
東北大学災害科学国際研究所 今村 文彦 氏

・令和6年能登半島地震による大災害で始まった2024年。東日本大震災から13年を経て、あらためて当時を振り返り、地震と巨大津波の発生、広域での複合災害の実態、そして課題を整理し、今後の防災対応について紹介する。

 

・東日本大震災の断層活動は南北約500km、東西約200kmと推定され、広域で複雑な断層破壊により海底変動が生じ、大規模な津波が発生した。複雑な海岸線をもつ三陸沿岸では津波の波高増幅がみられた。一方、仙台湾の南側から侵入した津波は浅海域に達して破壊力が増し、波が壁のようになって来襲した。河川を遡上した津波は、それまでの常識では考えられない内陸50kmを超える地点まで到達した。

 

・巨大津波による被害の様相は想像を超えて甚大であり、複雑であった。流れ・波力が増すことによる漂流物発生と被害や地形変化などは、このとき初めて記録された。沿岸中心地域では、海底に堆積した泥や砂などが津波で巻き上げられ泥流となって陸域に流れ込む「黒い津波」も報告された。

 

・当時津波警報システムの第1報は3分後に発表されたが、技術的限界からマグニチュードは7.9と過小評価され、津波波高は実際の1/10程度に過小評価された。その後、警報は速やかに更新されたが、第一波への避難に役立てることは厳しかった。現在では、日本海溝から千島海溝に至る海域に観測装置を設置し、リアルタイムな観測データの取得を開始している。

 

・震災伝承ネットワーク協議会や3.11伝承ロード推進機構が設立され、伝承ロードマップを作成して施設間の連携を図り、学習研修旅行の支援、各種啓発イベント企画、映像アーカイブ事業などを行っている。今後の防災活動のためには東日本大震災での教訓を整理し、伝承することが不可欠であり、震災遺構や伝承施設の果たすべき役割は大きい。

 

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