東北エネルギー懇談会

ひろば516号|せとふみのe report <要約版>

「再エネ拡大に向けた取り組み」洋上風力発電~秋田洋上風力発電株式会社(展示施設:AOW 風みらい館)~
サイエンスライター 瀬戸 文美氏

・日本屈指の風力発電適地と言われる秋田県では、日本海沿岸を中心に69カ所もの風力発電所がある。今回は、2022年12月に営業運転を開始した日本初の大規模洋上風力発電事業と洋上風力発電の今後について教えてもらうため、秋田洋上風力発電株式会社を訪ねた。

 

・ 風車の羽根に受けた風の力を回転力に変え、発電機を回して発電する風力発電。化石燃料を使用せずに発電できるため、脱炭素社会の実現に向けて期待される電力源のひとつだ。しかし風が吹かないと発電できない、風の強弱に発電量が左右されるといった再エネならではの欠点もあるため、年間を通して風況が安定した場所に風車を設置し、大きな羽根で風を受けることが重要になる。

 

・ 日本ではこれまで、継続的に風が発生する山岳地に多くの風車を設置してきたが、工事がしやすく、かつ安定した風が得られる山岳地には限りがある。そこで今、「海」の活用が注目されている。洋上は陸上に比べて強い風が継続的に吹くため発電効率がよく、稼働率もアップする。一方で、高い技術力を要する、建設コストがかかるといった欠点もあり、コスト低減につながる工夫が必要だ。

 

・ 水深50mほどの浅いエリアにある秋田・能代港の風車は、基礎が海底に固定される「着床式」工法で建設されている。しかし今後、港湾外の一般海域に洋上風力発電を拡張していくためには、風車を海底に固定せず、海面に浮かべた土台の上に建設し、水深が深い場所でも活用できる「浮体式」工法の洋上風力発電を、日本で研究開発することが必要不可欠だ。

・ 洋上風力発電が日本の基幹電源の切り札となるためには、官民一体となってコスト低減のために風車や各種設備の国産化と大型化のための技術を培い、政府主導により一般海域で大々的に洋上風力発電を展開・拡張していく必要がある。日本から世界へと、風力発電技術の研究開発が展開していくことが期待される。

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