東北エネルギー懇談会

ひろば513号|せとふみのe report <要約版>

「脱炭素へ期待の取り組み」アンモニア発電①~国立研究開発法人 産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)~
サイエンスライター 瀬戸 文美氏

・ 脱炭素の多様な取り組みの中で、ポスト炭素燃料として期待されているアンモニア。今回は、火力発電の燃料として直接アンモニアを活用する「アンモニア発電」の実用化に向け、産業技術総合研究所 福島再生可能エネルギー研究所(FREA)で進めている最先端研究の様子を紹介する。

 

・ アンモニアは、常温常圧下では無色透明で独特な刺激臭のある気体だ。空気中に一番多く含まれている窒素と水素で構成されている。他の元素と反応しにくい窒素を含むため水素単体より燃えにくいものの、炭素を含んでおらず、燃焼してもCO₂が発生しない。また、安全な運搬手段も確立されている。

 

・ 次世代エネルギー候補の中心である水素は、気体や液体として運ぼうとすると手間がかかるため、その水素を輸送・貯蔵する手段「エネルギー・キャリア」として、アンモニアが期待されている。FREAは、水素と窒素を反応させてアンモニアにして輸送・貯蔵し、必要に応じて水素を取り出す方法に注目している。

 

・ また、アンモニアはそのままで発電用ガスタービンの燃料としても利用できる。FREAは、天然ガスとアンモニアを混ぜて燃料とする混焼やアンモニアのみを燃料にする専焼に取り組んでいる。ただし、水素や天然ガスと比べて燃えにくく、大気汚染物質である窒素化合物も排出されるため、きれいに燃やすための工夫が必要となる。

・ FREAでは再エネからつくる水素でアンモニアを合成し、そのアンモニアで発電を行う実証の研究を続けている。実証結果を実際の発電所に導入して実用化につなげることが目標だ。本格的にアンモニアが燃料として導入されれば、これまで以上のアンモニアの生産や、反応効率がよいアンモニア合成のための触媒探しも必要になるだろう。

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