資源価格高騰の背景と今後の電力業界の対応策
読売新聞東京本社編集委員 倉貫 浩一氏
・世界中で資源需要が高まってきているが、天然ガスとLNGは供給力が限られており、国際情勢のわずかな変化で価格が変動する。また供給面では、脱炭素の実現を急ぐあまり油田やガス田の開発を行う上流投資が抑制されてきたため、世界的なLNGの需要増に対応できず、今後、深刻な供給力不足を招く恐れがある。
・日本政府の重要課題は、エネルギー価格の高騰にともなう物価上昇をどう防ぐかだ。天然ガス・LNGの市場の安定には、十分な供給力を確保するため、上流投資について継続的な資金供給が行われることが欠かせない。
・今回のウクライナ危機で浮き彫りになったのは、エネルギー政策は環境保護の観点だけで決められないということだ。エネルギーの価格と供給量の安定が極めて重要で、環境、経済性、エネルギーセキュリティの3つの視点「S+3E」を、バランスよく実現する方向に転換しなければならない。
・エネルギー安全保障と脱炭素の両立は難しい課題だ。そのため、CO₂を排出せず、発電コストが安く安定供給にも資する原発の重要性を見直すべきだ。石炭火力発電も、日本の電力供給安定化のためには欠かすことができない。CO₂排出量を抑える工夫をしながら既存の石炭火力を活かしていくことが現実的な対応だ。
・資源を持たない日本は、諸外国や国際機関などへエネルギー安全保障の確保の重要性を強く訴える必要がある。同時に、ウクライナ危機、脱炭素、日本の財政悪化の3つが電気料金の高騰を招き国民生活を苦境に追い込む事態を避けるため、官民で知恵を絞らなくてはならない。