東北エネルギー懇談会

ひろば520号|特集 <要約版>

地球が直面するトリレンマ
国立研究開発法人 海洋研究開発機構 海洋機能利用部門 部門長 大河内直彦

・地球の人口は2022 年11月に80億人を突破した。この2000 年の間におよそ50倍に膨張したことになる。特に20世紀半ば以降の伸びは著しく、過去80年ほどの間におよそ3倍あまりになった。

 

・生き物同士は「食う-食われる」という食物連鎖を通して、ほかの生き物へとエネルギーが受け渡されていく。この食物連鎖からみた地球の定員はおよそ80億人と計算され、人間はすでに定員に達していることになる。

 

・人間だけがなぜ未曾有の人口増を成し遂げたのか。それは農耕という抜け道を発明したからだ。農耕とは、特定の土地に降り注ぐ太陽エネルギーを独占するシステムのことであり、これによって、人類は「生態系の束縛条件」から抜け駆けすることができた。

 

・その後、人類は化石エネルギーに目をつけ、産業革命以降、その利用は瞬く間に世界中に広がった。増え続ける人々の食欲を満たすために、大量の窒素肥料を合成して農業生産性を高め、エネルギー需要は増え続けた。

 

・地球全体で考えると、食糧・環境(地球温暖化を含む)・エネルギーという人類にとっての三つの課題が三竦みの状態、つまり「トリレンマ」に陥っている。これらの問題を一気に解決する処方箋はない。小さな一歩を一つずつ重ねていくことが、唯一無二の解法である。

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