東北エネルギー懇談会

ひろば509号|特集 <要約版>

トリチウム水の海洋放出決定で、あらためて考える日本漁業の存続策
北海道大学大学院水産科学研究院 准教授 佐々木 貴文

・ エネルギーと同じように国民の生活に不可欠な魚や漁業であるが、その供給体制や存続策を気にかける人はそれほど多くない。しかし、魚介類の自給率の低下、就業者の減少、漁村の高齢化などが進んでおり、漁業にも「安定性」や「持続性」が求められている。

 

・ 日本漁業が弱体化するなか、政府から東京電力福島第一原子力発電所のトリチウム水の海洋放出「決定」が発表された。福島県では、震災からの復興途上にある漁業者や水産加工業者などへの影響が懸念されている。

 

・ 漁業現場の課題の解決には、陸域の論理で影響範囲を線引きしたりせず、漁業者や漁村の慣習を踏まえるなど、広域的かつ広範な視点からアプローチしていくことが必要だ。

 

・ 漁業者に責任を押し付けないことも重要だ。多くの場合、漁業者の言動や立場に注目しがちであるが、沿岸域での出来事のステークホルダーは、漁業者の背後にいる「多くの国民」であることを忘れてはいけない。

 

・ 日本漁業が、今以上に萎縮・疲弊することを避けるためには、漁業者が安心して操業できる環境を「具体的」に整備していく必要がある。これは、漁業を通じた食料安全保障の問題であり、国民全体の問題として、漁業の安定性や持続性を担保する施策が待たれている。

ページトップへ