地域資源を生かした商品開発で石巻の産業復興に挑む
宮城県東部に位置する石巻市は、東日本大震災で甚大な被害を受け、市内にある石巻専修大学でも、学生・教職員が被災し、キャンパスは一時避難所となりました。そうした中で、同大学経営学部経営学科・大学院経営学研究科の石原慎士教授(現 宮城学院女子大学現代ビジネス学部教授)と石原研究室の学生たちは、被災地の大学として中長期に渡って自分たちにできる貢献を考えました。
石原研究室は以前から「地域創造」をテーマに、地方都市における産業の活性化策や地域資源を生かした商品開発のあり方を研究しており、市内の企業や団体と連携体制を構築することで、地域性を生かした商品開発を行っています。
サバの中骨を使用して独自のグルメを開発
しかし、今、石巻市内にサバ節を作る工場はないため、そこで思いついたのがサバなどの魚の中骨でした。石巻港で水揚げされる水産物は、加工原料として用いられる比率が高く、水産加工会社では魚の中骨が大量に出ます。それらは養殖魚の餌の原料になるか廃棄されていました。しかし、この中骨は鮮度もよく、中落ちもついていることから、サバの中骨から出汁が取れれば、未利用資源の活用にも繋がるのではないかとの思いから石原研究室の挑戦が始まりました。
大好評の「サバだしラーメン」
中骨をレトルト加工し、学校給食の食材に
石原研究室の松川美希さんによると、国産魚は高価で、調理に手間がかかることから、水産都市の学校給食でも地元で獲れた魚があまり用いられていないそうです。「サバだしラーメン」の開発を通して、魚の中骨の可能性を感じていた石原研究室では、石巻港で水揚げされたサバやギンザケの中骨を圧力釜で加熱して柔らかくした「レトルト中骨」を学校給食の食材に用いるプロジェクトを始めました。
低価格・安定供給が実現した栄養豊富な「レトルト中骨」
賞味期限は常温6カ月。安定供給が可能で低価格に抑えています。栄養価も豊富で、分析機関に依頼して調査したところ、サバもギンザケも切り身と比べて50 倍以上のカルシウムを含むことが分かりました。
子どもたちも喜ぶ学校給食メニューの開発
完成したメニューは、サバやギンザケのレトルト中骨を活用した混ぜ込みご飯や手作り肉団子スープなど。地元の高校や松川さんの出身地でもある山形県高畠町の小中学校の協力を得て、給食メニューとして提供し、アンケートを集めました。中骨の柔らかさや旨味を生かしたメニューは好評で、特にギンザケの混ぜ込みご飯を提供した時には、おかわりを希望して子どもたちの行列ができたそうです。
「レトルト中骨」で惣菜や水産加工品も開発
震災後、さまざまなプロジェクトを通じて市内の企業や団体と交流を深めた石原教授と石原研究室の学生たち。その連携体制は「レトルト中骨」だけに留まらず、石巻の産業復興を大きく後押ししています。