野口英世青春通りの人情寿司店
会津さ来たら寄ってってくなんしょ!
会津若松市はレトロな街並みを楽しめる場所が多い。野口英世が青春時代を送ったことにちなむ「野口英世青春通り」もその一つ。この通り沿いに看板を掲げているのが「亀鶴寿司」だ。1982年創業の名店である。癒し系店主の平山典盟(のりあき)さん、東京・築地で修業を積んだ息子で二代目の篤司さん、それに「ヤマちゃん」こと愛されキャラの山内太一さんの3人が調理場に立ち、磨き抜かれた職人の腕を振るう。
(右から)平山篤司さん、典盟さん、山内太一さん
店が混むほどに3人の連携プレーが光る
40年余の歴史
今でこそ昼夜を問わず常連客らで賑わう繁盛店だが、40年余の歴史の中には苦労も詰まっている。東日本大震災で会津若松市は物的被害こそ少なかったものの、東京や仙台からの物流が寸断。新鮮なネタを確保するのが難しくなり、発災からしばらくの間は休業を余儀なくされた。また「福島の食」への風評被害も深刻だった。
北海道の取引先からの支援により、ネタの調達に目処がついたタイミングで営業を再開。篤司さんは「店がサプライチェーンに支えられていることを肌で感じました」と振り返る。震災と東京電力福島第一原子力発電所事故に伴い、大熊町が町ごと会津若松市に避難。営業再開後、大熊町の人たちも亀鶴寿司の暖簾をくぐるようになった。
コロナ禍では営業時間が制限されたものの、「客足が途絶えることはありませんでした。親方(典盟さん)の人望だと思います」と従業員の山内さん。外食を控える常連客から出前の注文が増えたことも、コロナ禍を乗り越えた大きな要因だったという。当時、にわかに出前を始めた店もあったが、亀鶴寿司は創業からずっと続けていたため固定客が多く存在していた。
「山国だからこそ」
会津若松市に限った話ではないが、回転寿司チェーン店の出店などにより多くの老舗寿司店が暖簾を下ろしている。その時流に負けじと、亀鶴寿司のランチメニューはリーズナブルだ。「にぎりランチ」は1,210円(税込)。いつもは回転寿司だが、たまには「回らない寿司」を味わいたいと思う客層に刺さる価格設定である。
東京・豊洲や仙台から直送される新鮮なネタ、素材にひと手間加えた江戸前の技、良心的な値段、会津の地酒……。こうしたこだわりは「山国だからこそ新鮮な海鮮を食べていただきたい」との思いからだ。
暖簾をくぐった先では、典盟さんたちが柔らかい表情で待っていてくれる。
豪快!! まぐろにぎり
大人気のばらちらし
塩とワサビで食す穴子白焼き
ほんのり甘くやわらかい……。
店主の人柄を感じさせる玉子焼き
亀鶴寿司
会津若松市中町2-82
Tel/Fax 0242-27-8596
営業時間:11:30~14:00、16:00~21:00
定休日:月曜日