女将は御年85歳

味世屋(みせや)食堂(いわき市)

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昭和風情を残す気取らぬ老舗 
震災乗り越えた創業当時の味
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髙橋ミネさん(左)、娘・小泉かほるさん親子 ミネさんの夜は近所の居酒屋でリフレッシュ

髙橋ミネさん(左)、娘・小泉かほるさん親子
ミネさんの夜は近所の居酒屋でリフレッシュ

ゆったりとした時の流れ

いわき市小名浜には巨大ショッピングモールがある。その賑わい拠点から一歩裏道に入ったところに、昭和の風情を色濃く残す老舗ラーメン店「味世屋食堂」がある。

ランチタイムより少し早い時間帯にもかかわらず、店内はすでに満席。「ごちそうさま」「ありがとね」という客とのやり取りはリズミカルで、どこか心地よい。

人気は五目ラーメン、ワンタンメン、チャーシューメン。鶏ガラベースのしょうゆ味のスープ、豚モモ肉を使ったチャーシューは、創業当時から受け継がれる懐かしの味だ。店内に流れる空気もゆったりとしている。客の出入りは途切れないものの、せわしなさを感じさせないのが不思議だ。

津波に見舞われても残った暖簾

店を切り盛りするのは女将の髙橋ミネさん、娘の小泉かほるさん、孫の徹也さん。初代は小名浜の地で駄菓子屋を営んでいたミネさんの父。小銭を握りしめた子供らが「店屋(みせや)に行こう」と集う場だったが、1953年にラーメン店を開業。その際、初代の味へのこだわりと、子供たちが言う「店屋」にちなんで味世屋食堂と命名した。

創業以来変わらないのは味だけではない。客を出迎える藍色の暖簾も、東日本大震災を乗り越えて今なお使われている年代物だ。震災による津波で店舗は損壊し、ミネさん、かほるさん、徹也さんは神奈川県に一時避難。かほるさんは、その間も「お客様が待っているんじゃないかと気が気でありませんでした」と当時の心境を振り返る。店舗を新築し、営業を再開したのは2012年4月。「再開後、すぐにお客様は来てくれました。常連さんや取引先の方々からは〝大丈夫だった?〟と、私たちを気遣う声をいただきました」と、かほるさんは感謝を忘れない。

「万人の口に合えば良し」

客層は幅広い。地元の常連客もいれば、今は小名浜を離れて都会で暮らし、帰省すると必ず訪れるという客もいる。

初代は「万人の口に合えば良し」との言葉を遺した。「母(ミネさん)、私、息子(徹也さん)が元気でいる限り、初代の味を守り続けたいですね」とかほるさん。客からの「おいしいよ」「また来るね」という言葉を励みに、これからも「万人の口に合う」素朴で懐かしいラーメンを作り続けていく。

美しい五目ラーメンは塩味もオススメ

美しい五目ラーメンは塩味もオススメ

懐かしの味・ワンタンメン

懐かしの味・ワンタンメン

創業当時の味が受け継がれる素朴なラーメン

創業当時の味が受け継がれる素朴なラーメン

店舗情報

味世屋食堂

いわき市小名浜字竹町23-1
Tel 0246-92-2492
営業時間:11:00~16:00
定休日:月曜日

ちょっと足を延ばして 
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http://shiramizu-amidado.org/