地域を盛り上げる親子鷹

浜膳(はまぜん)(南相馬市)

◆◇◆
復興を「食」で支え、
「地域のために」をいつも胸に
◆◇◆

復興に熱く立ち向かう只野訓良さん(右)、智士さん親子

復興に熱く立ち向かう只野訓良さん(右)、
智士さん親子

ゴーストタウンのよう

東日本大震災の直後、南相馬市原町区の国道6号線沿いで店の明かりを灯し続けていたのは、食堂「浜膳」だけだったかもしれない。浜膳を運営する有限会社グローバルサービス代表取締役の只野訓良(のりよし)さんは「まるでゴーストタウンのようでした。周辺には人っ子一人いない状況でした」と当時を振り返る。

卸業者など取引先と長年培ってきた信頼関係から、なんとか食材を調達し、温かい食事を提供することができた。これにより浜膳には復興・除染作業に当たる人たちが詰めかけるようになり、浜膳は「食」の提供で地域の復興に大きく貢献した。

2度の福島県沖地震

2021年2月13日と翌2022年3月16日。福島県沖を震源とするマグニチュード7超の巨大地震が発生。南相馬市は、2021年の地震では震度6弱、2022年の地震では震度6強の強い揺れに襲われた。東日本大震災からの復興が道半ばにもかかわらず、またしても停電や断水などが只野さんの前に立ちはだかった。

併設するビジネスホテルでは、入浴施設が被害を受けた。理不尽とも思える自然の仕打ちに、只野さんは「あの時は心が折れそうになりました」と述懐する。

こうした心境の時に支えとなったのは、火力発電所の復旧工事のため出張していた宿泊客からの一言だった。気が滅入った只野さんが部屋を掃除していた時のこと。「何か手伝えることはありませんか」と声をかけられた。この宿泊客は、只野さんが「食」を通じて復旧・復興を支え続けている姿を見ていたのだろう。その心遣いに只野さんは「目頭が熱くなりました。地元で踏ん張ってきた甲斐があったと感じました」と当時を懐かしむ。

息子とともに

度重なる苦境を乗り越えてきた浜膳。今も人気の食堂であり続けている。ボリューム満点の野菜炒め定食やしょうが焼き定食は人気メニュー。しょうが焼きに使う豚肉は、青森県出身の妻の伝手で三沢市から調達している。おかわり無料の定食の汁物は日替わりで、カニが入っていることも。ご飯もおかわり無料だ。これには「おいしいものをたくさん食べてもらいたい」という只野さんの思いが込められている。

2025年3月、遠方からの客を呼び込もうと、国道6号線沿いに新たにハンバーグ店「炭火焼ハンバーグ 牛たま」を開業した。こちらを任されているのは息子・智士(さとし)さんだ。後継者難で店をたたむ飲食店が多い中、「食」を通じた親子の地域貢献はこれからも続く。

人気メニューの野菜炒め定食

人気メニューの野菜炒め定食

青森県産山崎ポークのしょうが焼き定食

青森県産山崎ポークのしょうが焼き定食

新鮮な魚介が惜しげもなく盛られた刺身定食

新鮮な魚介が惜しげもなく盛られた刺身定食

店舗情報

浜膳

南相馬市原町区高見町2-86-1
「ビジネスホテル高見」1階
Tel 0244-24-5668
営業時間:11:30~14:00、17:30~21:00
定休日:日曜日

ちょっと足を延ばして 
お立ち寄りスポット

あすびとパーク

あすびとパーク

津波被災地を活用した学びの場。巨大コンセントのオブジェは、SNS映えするスポットとして人気。

【問い合わせ・アクセス等】一般社団法人 あすびと福島
https://asubito.or.jp/about/park.html

浜の駅 松川浦

浜の駅 松川浦

相馬で水揚げされる新鮮な海産物をはじめ特産品がずらり。飲食スペースでは「地魚丼」や「漁師のまかない丼」など海鮮料理を堪能できる。景勝地「松川浦」はすぐの距離。

【問い合わせ・アクセス等】
https://hamanoeki.com/