【特集:双葉エリア ホープツーリズム】

福島のいまを知る、
いまを学ぶ

2011年3月の東日本大震災で、地震と津波、原子力事故という、世界でも類を見ない規模の複合災害に見舞われた浜通り地方。福島県では複合災害の実像や、復興に挑む地元の姿を知ってもらおうと、学びと旅行を組み合わせた「ホープツーリズム」に力を入れています。

ホープツーリズムには、いくつかの「学びのポイント」があります。

[ポイント①] 
「福島の今」を「見る」:施設見学やフィールドワークを通じて、ありのままの被災地を体感してもらいます。復興に向けて確かな一歩を踏み出そうとする前向きな姿もあれば、長年の避難指示による影響が色濃く残っている光景も。光と影、いずれも「福島の今」です。

[ポイント②] 
「福島の想い」を「聞く」:困難な状況の中でもなお、前へと進もうとチャレンジする人々との対話から、多くの刺激や気づきを得ることができます。

[ポイント③]  
福島の問題を「他人事」から「自分事」へ「考える」:震災と原子力事故の教訓を、未来(社会、地域、日常、自分自身)にどう生かすかを、ワークショップなどを通じて考えてもらいます。人口減少や高齢化、エネルギー問題は福島だけの課題ではなく、多くの地域が抱え、解決すべき問題です。ワークショップではそうした視点に立って議論します。
ツアーは半日、日帰り、2泊3日など多彩なコースがあります。
ホープツーリズムについてもっと詳しく知りたい人は、福島県観光物産交流協会ホープツーリズム・教育旅行推進部門まで。

https://www.hopetourism.jp/

特集写真01
東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)
特集写真02
震災遺構浪江町立請戸小学校(浪江町)

フィールドパートナー 
一般社団法人ふたばプロジェクト

小泉 良空 さん

小泉 良空さん

双葉の「ありのまま」、自分の言葉で伝えたい

ホープツーリズムを実地で案内するのがフィールドパートナー(FP)です。その一人、一般社団法人ふたばプロジェクトの小泉良空さんにお話を伺いました。

大熊町で生まれ育ち、中学生の時に東日本大震災を迎えました。避難生活を経て、いわき市内の高校、東京都内の大学に通い、卒業後は福島市内で住宅営業の仕事に就きました。しばらく双葉地域を離れる生活でしたが、ずっと「地元に帰りたい」と思い続けていました。
福島県内に住む人ですら「まったく人が住めない町になった」「まだ(放射能で)汚染されている」「町があるか分からない」というイメージを持っていることに驚き、マイナスなイメージの根深さを痛感しました。大好きな地元だからこそ、勘違いされていることを、とても悔しく思っていました。
大学時代に教員免許を取得し、人前で話すのは苦になりません。自分の言葉で双葉地域のことを伝える仕事は、私に向いているのではないかと考え、研修を経て2021年11月にFPとなりました。
訪れる人に対しては、自分の感情を交えずに事実を伝えるよう心がけています。双葉地域の今を正しく見てほしい。震災から12年以上が経っても、決して復興したとは言い切れない状況があります。それが「ありのまま」の姿です。そうした光景を見て、参加した人たちが「復興って何だろう」「今から災害に備えよう」「自分事と捉えて何ができるか」と考えるきっかけにしてほしいのです。
ツアーには、修学旅行や部活動の学生、有志の集まりなど、幅広い人たちが参加してくれます。参加した前後で、この地を見る目が大きく変わってくれることは、私にとっても嬉しいことです。
双葉地域の姿は変わってしまいましたが、変わった今だからこそ、伝えられることがあると思います。この地域を忘れてほしくはありません。FPの活動を通じて、大好きな地元をこれからも伝えていきたいと思います。(談)

特集写真03